「意味分かんねぇ。俺ら双子でも性格違うし。今迄だって隆好に言われた通り社員達と接触しないようにして、クールさ気取ってただけだし。本来の俺は、こうなの!」


「他人にとやかく言われたくない」と口にする裕隆さんは、何故か耳を赤くして。私から視線を逸らしたりしたから、その言葉がかえって嘘に聞こえてしまう。


「だったら、副社長の隆好としてじゃなくて。吉野裕隆としてH&T㏇で働けばいいじゃないですか」


 現社長が作った会社なのだから身内である息子一人を入社させること位、簡単にできるだろうと気楽に提案した私の額を、裕隆さんは人差し指で突いた。


「バカか、アンタ。どうして俺がフリーターをしていると思う? 隆好は次期社長って座と俳優なんて煌びやかな世界と、両天秤にかけて楽しく生きてるっているのに。例えそのどちらを望んでも叶わないのは、俺が隆好の双子の片割れだからだ。親父だって隆好にばかりアテにして……」

「そんなことないと思います。社長にとって、どちらも大切な息子さんには変わりないはずです」

「かわるんだよ、うちでは」


 長男が社長の座に就くことは、社長が会社を創設した頃から既に決めていて。俳優業を始めた隆好の代わりに裕隆さんが会社を継いだらどうか、と持ち掛けた際も。
 社長のひとことにより、即座に却下されたらしいのだ。