私はうなずく。


「だから、伊緒くんが好きな人にちゃんと向き合えるように、伊緒くんから自立しなきゃと思って……」

「そっか、だから急に料理作ったり……」


伊緒くんが納得したように言って、私の頭を優しくなでる。


「俺たち、意味のないすれ違いをしてたんだな」


ほんとにそうだ。

私は伊緒くんを。伊緒くんは私を想って……。


「俺がモモに構うのは、モモが好きだからだよ。そりゃあ……傷のことはずっと気にしてたけど、それ以上に俺がモモの側にいたかったんだ」

「伊緒くんっ……」


恥ずかしい……っ。

きっと今、私真っ赤だよ。周りが暗くて良かった。

──と、伊緒くんが、ガラリと口調を変えた。


「てか、真柴に告白するってのは?」


ギクッ……。


「う、嘘です……」

「うそぉ……?」


伊緒くんは気の抜けた声を出した。


「モモのくせに、俺に嘘つくなんて生意気」


少し体を離して、私の鼻をむにゅーっとつまむ。


「ご、ごめんなさい~……」


バツが悪すぎて、伊緒くんの顔が見れないよ。

伊緒くんのためだったとしても、それは真柴くんに対してもすごく失礼なことだったと思う。

あ……真柴くんも置いてきちゃった。

あとでちゃんと謝ろう。


「モモ」


優しく名前を呼ばれて。

ゆっくり顔を上げたら、優しい伊緒くんの瞳が見えた。

いつものイジワルな顔じゃなくて。

そして、予告もなくキスが降ってきた。