「……っ!」


パサッ……。

それを受け止めてくれたのは、やわらかくて温かい温もり。


「……バカ。なにしてんだよ……っ」


頭上から、皮肉にあふれた優しい声。

伊緒くんからの「バカ」。

これほどまでに愛しいって思ったことはない。


「ごめ……なさいっ……」


ひっくひっくとしゃくりあげる私を、伊緒くんは力いっぱい抱きしめてくれた。


「どこに消えたかと思って、マジ焦った……」

「ごめんなさい……」

「もう俺のそばを離れんなって……」


余裕がなさそうなその声に、胸がきゅんとした。

伊緒くんは、私をずっと探してくれていたんだ……。


「モモにまたなんかあったら……マジで耐えられないんだよっ……」

「……」


昔のことを重ねているんだとわかって、チクリと痛む胸。

私は、どこまでも伊緒くんに迷惑かけてばかりだ。