「傘ありがとう。濡れちゃったよね」
ハンドタオルを出して、濡れた伊緒くんの腕を拭くと、
「俺はいいから、自分の体拭いて」
優しく戻され、逆に私についた雨粒を拭いてくれる。
「こんなに濡れて、寒いだろ?」
「だ、大丈夫だよ」
「……だよな、聞いた俺がバカだった」
すると、いきなり私を抱きしめてきたから驚いた。
「い、伊緒くんっ……?」
「最初は冷たいかもだけど、我慢して」
そうじゃなくて。
確かに濡れたシャツで抱きしめられて冷たいのは事実だけど……。
ドキドキしちゃってどうしていいかわからないの。
おかげで、怖さも寒さも吹っ飛んでいく。
「ほんとは脱いだ方がいいんだけど、さすがにここで脱いだら通報されそうだし」
ぬ、脱ぐっ!?
なんてこと言うの伊緒くん!