ほんとは怖くてたまらないけど。

こんなんだから、私はいつまでたっても伊緒くんのペットなんだ。

もうちょっと、自立できるようにならないと。

しがみついた手を離そうとしたとき、


「……って聞いた俺がバカだったな」

「……?」


伊緒くんは、傘を持っていない方の手で私の背中に手をまわした。

えっと。

"俺がバカ"……って?

いつも毒舌な伊緒くんからの思わぬ対応に、面食らっていると、


「カミナリやばいな。どこかに避難できるとこ探そう」


私を抱えるようにしながら足早にどこかへ向かう。

私の足は、伊緒くんに引っ張られるまま動く。

もう少し行けばスーパーがあるし、そこまでの我慢かな。

パシャパシャ。

水しぶきを上げる足元。

もう川の中を歩いているような状態。


その時、声がした。