「何それ。海藤、あいつ、一体どこまで腐ってんのよっ」

「俺も馬鹿なもんで、最近になって気付いてしまって」



私も楓も、怒りを露にする。

これには、流石の私も「百年の恋も一時に冷める」というものだ。

元々海藤くんに恋なんて、全くしてはいなかったけれど、もう『画面越しの芸能人』を観る様な気持ちすらも、どこかへと消え去ってしまった。

「健太くんは何も悪くない」って伝えたいのに、今、聞いた話が私の中で、よっぽど衝撃だったらしく、言葉が音にならない。

私はただ一生懸命に、首を横に振った。

そんな自分の欲を満たしたいだけの為に、人を使って、都合の良いときだけ使って……、人を道具の様に扱う人の神経が知れない。

知りたくもない。

説明されたところで、一生わかり合えることは無いから。



「蜂矢くんは馬鹿でもないし、何にも悪くないですよ……!」



楓が私の気持ちの全てを、代弁してくれた。

その瞳は、沸き上がる腹立たしさから、揺れていた。

これ程までに感情をダバダバに吐露させる2人組に、健太くんは苦笑いする。



「華世のこと、こんなに大事にしてくれる良い人を利用するなんて真似……あいつ、一生許さん!」



そう叫ぶ楓の声も、少し震えている。

いかり、悔しさ、悲しみ、そして人を思い遣る気持ち。

この空間は、たくさんの感情が一度に存在している。

最も人間らしい場所。

昨日の海藤くんの真っ黒な瞳を思い出す。