顔を上げて、その方向を確かめる。

そこには、部活終わりで、泥々に疲れきった様子のユニフォーム姿の健太くんが、こちらに歩いてきていた。

その時、楓に脇腹あたりをコツコツと静かに、肘で小突かれた。

私に声を掛けろ、と言うのは、ごく自然な流れだろう。

楓は、健太くんと恐らく、ファーストコンタクトだろうから。

とは言え、私はその先手やらの内容を知らされていない。



「お、お疲れ様、です」



にじり寄るように現れた私に、健太くんの肩が跳ね上がり、彼は後退る。

大きな男の子を驚かせてしまった。



「驚かせて、ごめんね」

「いや。こんな時間まで……どうした」

「あ、あのね――

「ごめんなさい。私が蜂矢くんと話したいことがあって、華世ちゃんにお願いしたんです」



突然、間に入り込む女子 楓に再び驚く。

そして、はい、とだけ返しながら、予想通りの訳が分からないという表情になってしまった。

慌てて、身元だけ、紹介する。



「私の親友で楓! めちゃくちゃ良い子なの」

「やだぁん! もぉ、華世~」

「み、みんな! 3人とも同じクラスだよ!」