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時刻は、19時半。

私を楓は正門のところで、ある人物を待っていた。

帰宅部の私は、親に心配させないように、遅くなる旨のメッセージを送信済みだ。



「楓、本当に話しするの?」

「するよ。じゃなきゃ、こんな絶好のチャンス、昼間にはできないでしょ。この任務の絶対条件は、海藤に見られてないときに相談すること、なんだから。あいつの居るところで話なんてしようものなら、何されるか分かったもんじゃない」

「そ、そうだけど」

「あいつも帰宅部で、他校の連中と、よくつるんでるらしいから、今なら安心、ってことで。任務なら、今が決行時でしょ」

「任務って」



そう言って、私は控えめに笑ってしまったが、楓は至って真剣で、これ以上のおふざけは出来ないことを察した。



「これは、私の大切な華世姫を守る為なんだから」

「かえでぇ……」

「よしよし。でも、きっと私だけじゃなくて、彼にとっても、かもしれないよ……?」



こんなタイミングで泣くつもりもなかったのに、不覚にも僅かに涙ぐんでしまった私を、優しく包み込んでくれた彼女の声の方向は、こちらではないようだった。

どこか別のところへ向けられている。