「そっか……楓はすごいね」
「何にも、すごくなんてないよ。運が良かっただけ」
「ううん。ちゃんとそういう相手を探し出せたんだから」
楓は容姿も抜群に良いし、性格だって癒されるし、こんなにも面倒見が良くて。
そんな彼女の彼氏さんが、少しだけ羨ましい。
「まぁまぁ。今後、どうなっていくか、まだまだ分からないし」
「それでも、だよ」
楓の喉をミルクが、勢いよく通っていく。
カップの中身を飲み干した彼女は、テーブルにそっと、それを置いた。
「しかし、華世ってば、すぐ自分の話は逸らそうとするよね。私からも聞きたかったことがあるのに」
「な、何でしょう」
「まだ好きなの?」
「え、何が?」
「あいつのこと」
「……海藤くんのこと?」
「そう。ちゃんと答えて」
返事をする楓は、何故か口を尖らせている。
彼女があいつ呼ばわりしたり、少し拗ねた表情をするときは、大体が海藤くんの話題のときだ。
それに関しては、この前、教室で言ったはずなのに。
「だから、そんなんじゃないってば」
「えー? 本当に?」
「本当だって。あくまで、目の保養! 私にとって、海藤くんは画面越しの芸能人みたいなものだって。現実世界では、あんまりお近づきにはなりたくない感じの……」
「夢崩れるから?」
「そうそう! だから、今の距離感を保って、鑑賞してたい。付き合いたいかって言われたら、断言出来る。そうじゃないって」
「ほう。それを聞いて、ちょっと安心した。この前も華世、話し掛けられて喜んでたから」