溜め息を吐くように、ホットミルクを冷ます仕草をしてみる。
とっくに、適温になっている筈なのに。
この先にやってくるか、どうかも分からない将来に、不安になっているのだろうか。
今、私自身、僅かに挙動不審になっている。
この手の話題は、本当のところ苦手だ。
私が「どうせ私だから」なんて、少し不貞腐れてしまうから。
空気を乱すといけないので、表面上に出さないようには、十分気を付けているつもりだ。
今、この時もあまり好かない面倒臭い私自身が、顔出している。
直ぐ様、話題を変えなければ。
「それよりもさ、ほら。楓こそ、どうなの? 今の彼氏さんとは」
「え、私? 何も変わりないよ」
「それは良いことだ。相変わらず、ラブラブなんですねぇ。彼氏さん、大学生だっけ」
「うん、そう。一緒に居ると楽なんだよね」
「楽、か……」
「良い意味で気を遣わないから、素の自分で、ずっと居られる」
楓の言葉に思わず、身体が固まる感覚に陥る。
自分の中で、驚きと発見が生まれた気がして。
「華世は『誰かの特別に』って、よく言うけど。私にとっての特別は、そういうこと」
「え」
「だって、素の自分は、誰にでも見せられるものじゃないからね。それに、意図して見せるものじゃないし」
普段の楓とは思えない程、ふふっと控えめに笑う彼女はいつも以上に、私の目には素敵に映った。
「愛し合うことは、前提で。自分の日常の中に相手が居ても、何にも違和感がない。そんな人に巡り会えること自体、ほとんど無いよ。だからね、特別」