その気にさせる、なんて。
「それが出来るのは、楓が美人だからだよ。私には無理だ」
「無理じゃないよ」
楓のいつもより、やや強めの口調と影を感じる、あまりにも真剣な表情に、目が離せなくなった。
先ほどまで、にこやかだったのが、嘘のように。
「顔が可愛いだとか、スタイルが良いとか……見た目だけで判断するようなヤツ、最初からダメだよ」
少し様子がおかしい。
私の為に言ってくれている筈の、そんな彼女を見ていると、心配になった。
「かえで?」
呼び掛けると、楓はハッと我にかえる。
「……そうは言ったけど、華世は可愛いからね! もっと自信持った方が良い」
「それは、何とも言えないけどーー」
「可愛いんだよ! もちろん、内面も。華世の良さは、噛めば噛むほど出るんだから。それに気付いて、そんな華世を愛でたい殿方なんて、華世が困るくらい、たくさん居るよ」
「うーん……それが本当なら、そろそろ見つかっても、おかしくないと思うんですがねぇ」
そう茶化しながら、言葉を返してみた。
誰かの特別になりたいなんて言っても、何か際立った特徴がある訳でも無い。
今のところ、それを見つけようともしないで、アピールしようともしないで。
こんなことじゃ、見つけてもらうことの方が、よっぽど難しい。