「いいよ。どうぞ」



ノートをぱらぱらと捲り、宿題のページを開いた状態で渡す。



「ありがとう!」



海藤くんの笑顔は、眩しい。

いつも直視出来ない程だ。



「栗山さんの字って、達筆だよね」

「そんなことないよ」

「そんなことあるって。すごく読みやすいもん。いつも助かってる」

「と、とんでもない」



照れて返すと、改めてお礼を言って、海藤くんは席に戻っていった。

一言も喋らなかった健太くんも、そのまま戻っていく。

それにしても、何故だろう。

最近、海藤くんから話しかけられることが多くなった。

もしかして、私のこと──。

なんて、自惚れてはいけない。

海藤くんは人当たりが良くて、みんなに優しい。

私だけが、特別な訳ないのだから。

だから、遠巻きに眺めるだけで満足だ。



「さっきの笑顔、素敵過ぎた……」



ぼんやりと呟いた私に、楓は険しい表情で言った。



「目、覚ましな」

「え」

「あいつ、華世の思ってるような奴じゃないよ」

「大丈夫! 別に付き合いたいとかじゃないから。あくまで、目の保養」

「それなら良いけど。あんなのに、本気になっちゃダメだからね」

「あんなのって、酷いなぁ。ならないよ。それに私は――」



私には、人に笑われてしまいそうな「願い」がある。