「お待たせしました。ホットミルクです」

「お、ありがとー」



楓はスマホを弄るのを止め、こちらに視線を向けた。

そして、ミルクの入ったカップを両手で包んで、満足そうに微笑む。

すると、彼女の視線は、お盆の上に気が付いたようだ。



「あれ? もう1つは違う人の?」

「ううん。これは私の。一緒に座っても良い? 休憩、もらえちゃった」

「そういうことね! もちろん。どうぞ」



向かいの席に促され、一息吐いた。



「お疲れ様」

「ありがとう。あと、来てくれてありがとうね」

「いいえ。それにしても、こういうの何て言うんだっけ? 華世も、カフェの制服が板前さんになった……」

「多分、板に付いてきた、って言いたいのかな」

「あ! それそれ!」

「じゃあ、褒め言葉として、受け取ります」

「そりゃ、そうでしょ。ここまで来て、貶したりしないよー」



膨れる楓が面白くて、つい笑ってしまう。

そんなやり取りの後、2人とも温かいミルクを啜る。

その温さに、ホッとした。

安堵のあまり、2人して沈黙になると、外の雨音が際立った。



「今日は1日中、雨だね」



私の声に、楓は窓の外へ視線を向ける。