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「栗山さん、ありがとう。ご苦労様」

「いえ」



早々に1階の職員室にやって来て、先生へノートを手渡し、教室に戻ることにする。

無心で1段ずつ上っていると、その途中で今、会うには気まずい人たちと鉢合わせてしまった。

渡り廊下でラブレター代行を頼んできた、例の先輩方だった。

私と同学年であるらしい、大人しそうな子は居ない。

とりあえず、あまり関わらないように、私は会釈をして通り過ぎることにした。



「ねぇ」



掛けられた声に、思わず肩を揺らす。



「はっ、はい! なん、な、何でしょう」



また私の進行方向を塞ぐようにして、見下げながら、立ちはだかられた。

見上げて、ぎこちない笑顔を向けてみる。

それでも先輩方は、同調してくれる気配はなく、ずっと仏頂面だ。



「さっきの件、本当にしてくれないの? 手紙、渡すだけじゃん」

「平気な顔しちゃってさ。うちらの後輩、泣かせて許さないから」

「頭、固すぎ」



3人がかりで言ってこられると、気弱な私では流石にきつい。

自然と自分の口が開いた瞬間に、危うく謝罪が出そうになった。

それを慌てて、止める。

──私が謝る必要って、あるの? あの子を思ってのことなのに。

口から滑り出しそうだった「すみません」を、ぐっと飲み込んだ。



「本当に渡すだけで……良いんですか、ね」

「は? 何?」

「だって、あの子、きっと本当に好きだから必死なのに。関係の無い私から渡して、その想いをもし読み流されしまったら……代行することを受けた私は、あまりにも悲しいです」



体の横で、手汗がだくだくの拳をぎゅっと握る。