「何なら小一時間、語ろうか? まずは、華世ちゃんのここが好きだなぁ、って思う瞬間から」

「けっ、結構です……!」



少しずつ、縮まっていく距離に堪えられなくて、手を前に出し、健太くんを制止する。

すると、前に出していた手を、不意に握られた。



「結局、華世ちゃんは俺のこと、どう思ってるの? 手紙の内容を伝えるだけで、本当に十分だって思ってるの……? もしかして、俺のこと、まだ苦手?」



苦手だったのは、健太くんが私のことをからかってきたから。

何故か私だけに、嫌なことをしてきたから。

今の健太くんには、そんな素振りは微塵も見えない。

むしろ、いつの間にか、守られている。

いつから、こんなことになっていたのやら。

優しい眼差しや、優しく握られた手の加減。

今の彼の表情、行動を見ていれば、分かる。

私が恥ずかしくなる程、絆されてしまいそうだ。



「ごめん……」



謝り、うつ向く彼へ、ちゃんと確かに伝える。



「違うよ。好きなの」



私の言葉に勢いよく顔を上げた彼は、私のことをはじめ凝視していた。



「本当……?」

「もちろん、本当だよ。嘘だと思うのなら、その手紙、読んでみて。気持ちは精一杯込めたから」



私が言うと、健太くんは封筒を眺めた後、開封しようとする。



「いっ、今じゃなくって! 自分の部屋に帰ってから読んで」