過去の私を、自分が覚えていなかったことと、現在の健太くんの表情が相俟って、申し訳なさから、思わず頭を下げた。
「そこまで傷付けてたなんて、知らなくて」
私は顔を真っ青にしながら、謝罪をし続けた。
しかし、健太くんは、こんな私に微笑んだ。
「そのくらいショックだった。そのくらい――
その時の彼の泣き出してしまいそうな顔が、あまりにも印象強すぎて、一生忘れられそうもない。
――華世ちゃんだけが大好きで……」
大好き、なんて絶対に言わなそうな硬派な健太くんの口から出てきたから、今度こそ膝から崩れ落ちそうになった。
破壊力が凄い。
ああ、あの時に気付いていれば。
私も健太くんのことを、好きになっていれば。
今、現在の私は、こんなにも悩まなくても良かったのに。
あの時に、彼を傷付けるようなことを口走らなければ。
なんて考えたところで、後の祭りだ。
どんなに悔やんだところで、過去は戻ってきてはくれないのに。
「私たち……昔からの幼馴染みだから。好きな人の1人や2人、中学高校の間に出来てるんじゃないの?」
「なんでだろうな。今でも、華世ちゃんしか、好きになれない」
告白。
しかも、あまりにも急な展開過ぎて、喉がひゅっと鳴る。
「も、もっと視野を広げてごらんよ。か、可愛い子、たくさん居るのに――
「もう、そういう話は聞かない」
私がいくら、おどけてみせても、今の健太くんには効かないようだ。
1歩近付いてくる彼に、少し動揺する。
そして、次の瞬間には、彼の手が私の頬に触れた。
そのまま、そっと撫でられる。