「やっぱり、健太くんは意地悪だ……」
「そうだよ。俺が意地悪なのは、華世ちゃんだけが昔からよく知ってるでしょ」
何だか、悔しくなった。
それは、きっと健太くんの言い方のせい。
「私ばっかり、ちょっかい出されて、嫌だったんだよ。髪を引っ張られたりしたことも」
「本当に、悪かったと思ってる。あの頃の俺って、本当に仕様も無かった。だけど……」
言葉に詰まった健太くんは、ひどく悩んでいるように見える。
「健太くん……?」
「華世ちゃん、いつも女子たちの輪の中で、楽しそうにしてたから。俺のことも、少しくらい、見てほしかったんだ」
至って、真剣な彼に、私は混乱してしまう。
「え……だって。と言うか、健太くん……それって私のこと、好きだったの?」
混乱の中でも、言葉の中に在る情報を集めて、辿り着いた答に胸が高鳴った。
期待ばかりが先走って、つい口にして聞いてしまっていた。
健太くんは私が導き出した答を聞くと、ぼっと音がしそうな程に顔を赤くする。
「そうだったんだ……」
当時、全く気付いてあげることが出来なかった。
その上『嫌い』だなんて、酷いことを言ってしまった。
そんな酷いことを言ってしまった私に怒るどころか、離れていくどころか、こうしていつまででも側で気に掛けてくれている。
私には有り難いと当時に、不思議でならなかった。
せめてもの当時の償いになれば、とあの手紙、もとい私のお守りをおずおずと彼へと差し出した。
「あの、これ」
すると、健太くんは目を見開く。
「え、これ……。あの時、海藤に破られたやつじゃ……」
「書き直したの。ちゃんと」