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『着いた』

軽快な通知音と共にやって来たメッセージに、私の心は踊り出す。

慌てて、外に出る準備をした。



「お母さん。外に友だち来てるから、ちょっと出てくるね」

「夜遅いから、気をつけてね」

「はーい。家の前まで来てもらってるから、すぐ戻るね」



心配するお母さんを横目に、玄関の扉を開く。

開いた、その正面には部活終わりで草臥れている筈の健太くんが、背を向けて立っていた。

思わず、側まで駆け寄る。



「お疲れ様。ごめんね。寄ってもらっちゃって」

「別に良いけど……。俺が家の前で会おうって、言ってなかったら……。まさか、その格好で公園に行こうとしてた訳じゃないよね?」



今の自分の格好を改めて、見る。

普段、部屋着として着ているスウェット生地の、グレーのワンピース。

両膝の外側あたりには、スリットが入っている。

私としては、部屋でまったり過ごすときは、もちろん。

外行きの服として着ても、可笑しくはならないず、そして可愛いデザインなのでお気に入りの1つだ。



「この格好で行こうとしてた。変だったかな……」



そう答えた私に、健太くんは溜め息を吐いた。



「……来て良かった」

「本当にごめんね。疲れてるのに」

「いいよ、そんなに謝らなくても。前にも俺、言ったでしょ」

「えっと……。なんて言ってくれたっけ?」

「あの時も『2度は言わない』って言った筈どけど」

「そ、そんな」



いくら、せがんでも、健太くんは悪戯っぽく笑うだけだ。

あの時も、全く聞こえていなかった訳ではなかった。

でも、未だに信じられなくて。

そんな都合の良いこと、信じてはいけない気がして。

だけど、もう一度だけ聞かせてほしくて。