そうと決まれば、あの手紙をもう一度書こう。
自分の気持ちがそっぽを向かない限りは、何度だって再生可能だから。
それを実感できたのは、今の自分自身が諦めることを選ばなかったから。
そして、親友に背中を押してもらったから。
きっと今日も健太くんは、以前に待ち伏せをした時と同様に、19時半頃まで、ずっと部活の練習をするのだろう。
それだけ遅くなるのであれば、一度、家に帰ってから、手紙を書き直す時間もある。
それならば「善は急げ」だ。
結果は善とはならない、と分かっているのに。
そんなことは、気にしないことにして、スマホをポケットから取り出した。
そして、メッセージアプリを開く。
『お疲れ様です。話したいことがあります。今日の夜、近所の公園で少し話せないかな』
事前に連絡を入れて置いて、約束を取り付けておく。
今まで、メッセージアプリのアカウントを健太くんと、交換していなかったのに、何故知っているのか、と言うと。
大分前に、海藤くん悪事対策委員会を結託したときに、楓と健太くん、そして私とで、グループ内でメッセージのやり取りが出来るよう、作成したのだ。
だから、また、こうして繋がれた。
返事は授業開始の直前に、やって来た。
それは、ちょうど女の子たちが、自分たちの席に散り散りになって、戻って行った、その後だった。
同じ教室にいる筈なのに、こんな方法でしか対話することが出来ないなんて。
何だか、空しい。
私は、健太くんから届いたメッセージを開いた。
『片付け終わってから帰るから、かなり遅くなるけど大丈夫?』
『大丈夫。公園で待ってるね』
『ダメ。華世ちゃんは家で待ってて』
『わかりました』
本当は、内心では『わ、わかりました……』と放心状態なのが、正解だ。
きっと、これは1人で夜に出歩いてはいけないと、私を気遣ってくれたのだろう。
他の女の子たちに囲まれても、私を女の子扱いしてくれる。
やっぱり健太くんは、変わった。
昔は、私以外の子に優しかったのに。
今は、私も、そこに入れてくれる。
私に悪戯なんて、一切しない。
私だけを見て、悪戯なんて絶対しない。
小学生の頃、とにかく嫌だった。
それなのに、今は無性にあの頃が懐かしくなる。