「あれをご覧よ!」



私は、健太くんに群がる女の子たちを指差した。



「それを聞きに行こうにも、その隙間さえ無くなってしまったんだよ?!」



ひと叫びした後で、私はその場で項垂れる。

誰も振り返る人は、居ない。

それくらい、みんなが健太くんを注目している、と云うことなのだ。

――今まで、誰も健太くんのことなんて、気にもしていなかったのに。

――私だけが、長い年月で積み上げた、彼の努力を知っているのに。

あまりにも淋しくなって、正直泣きそうだった。

私の落ち込み具合に、楓が如何にも当たり前と言うように、提案する。



「……別に無理して、学校内で話さなくても、良くない?」

「どういうこと?」

「他の女の子には到底、敵いっこない2人の唯一とも言える、共通点があるじゃん」

「そんな必殺技みたいな、共通点なんて……」

「幼馴染み」



分かり切っていた筈の答を、楓は堂々と言い放つ。



「だから、そういうことなら、家だって近所なんでしょ? 学校じゃなくて、そっちで会って、ゆっくり邪魔されることなく、話せるじゃん」



その言葉に、思わず仰け反った。

何故、今の今まで、そこに思い至らなかったのか、不思議でならない。

そんな私に、楓は呆れている。



「そっか……。全くその通りだよね」

「全く、この子は」



確かにそうすれば、誰にも邪魔されることはない。

その上、部活で健太の帰りが遅くなっても、会おうと思えば、いつでも会うことが出来る。

何と言ったって、私と健太くんの自宅は、ほぼほぼ近所なのだ。

歩いて、5分もかからない。

町内でも、同じ地区だ。