なぜ、そんな気持ちとなってしまったのか。
そこには、深くて暗い理由がある。

わたしの生まれ、育った家は暗黒の巣窟みたいな恐ろしいところ。
京都で創業三百年続く、お茶屋、世間的に見れば立派な家柄だと見られている。
屋号は『一碧堂(いっぺきどう)』、白桔梗(しろききょう)の家紋まである。
けれど、一歩中に入ってみれば、全く別の顔を持つ。

その原因は、両親からのひとり娘への異常ともいえる『 愛 』
いや、親子とは思えない温かさのない仕打ち。
早く、こんな家、ガラスの巣窟(そうくつ)のように壊れてしまえと願っていた。