そんなこと、誰にも言えなくて
ずっと、心の中に鍵をかけて隠してきた。
「娘は両親の道具かいな、冗談じゃない」
情けなく、怒りがこみ上げてくる。
これって、良家同士の政略結婚というもの?
戦国時代じゃあるまいし。
けれど、いつしか、仕返ししたくなり、黙っていた。
大人になるまで、じっと、我慢や。
十八歳になれば、親の同意なしで結婚できる。
最悪、この家を出てゆけば良い。
今は知らない良い子のフリをしていよう。
絶対に嫌ものは嫌。
好きな男なんて、自分で見つけたい。
一生の内、そんな男と出会える機会は何度もないのだから。
「この手で、一番星の幸せを掴みとるんや」
そう、乙女心に誓ってきた。