「まだ、ゆき乃には内緒にしておこうや」
中学生になった時、両親の隠し事を聞いてしまう。
「短大を卒業して二十歳を迎えたら、祇園の利休へ嫁に……」
「あそこには、五つ上のイケメン御曹司がいる」
「向こうの両親も、気に入ってくれている」
「この話し、娘に変な虫がつかないうちに急いだ方がいい」
『祇園の利休』とは、うちの家業と同業の老舗の店。
「二人が祝言をあげれば……」
「そうや。良家にとって、最高や」
「娘だって、御曹司の嫁、文句はないはず」
そんなこと、深夜に話している。
「まだ、これは彼女には言わん方がいいな」
父も、頷いて返事をしていた。