「2週間後の挙式が無理なことは分かった。だったら、それはキャンセルすればいい。その後で、俺たちのための式場を探そう。それなら、いいだろ?」

今度は、院長にぎゅっと左手を握り締められる。

私は、もう恥ずかしくて顔を上げられない。

「あの……、私なんかでいいんですか?」

私は握り締められた左手を見つめながら尋ねる。

「君じゃなきゃダメなんだ」

でも、やっぱり……

「あの、でも、やっぱり、結婚の前にお付き合いをしてからの方が……」

私がそう言うと、院長は、私の手を離し、ぎゅっと私を抱きしめた。

「それって、つまり、俺と付き合ってくれるってことだよね?」

あ……

言われて初めて自分の言った言葉の意味に気づいた。

でも、今さら、そんなつもりじゃなかったなんて言えない。

だって、院長がこんなに喜んでるんだから。

私は院長の腕の中で、こくりとうなずいた。

いいよね。

院長なら、きっとすぐに好きになれる。

今だって、こんなにドキドキしてるんだから。




◇ ◇ ◇




それから、約半年後、私はバージンロードをゆっくりと歩く。

隣を歩いているのは、院長ではなく、子供の頃から私を可愛がってくれていた父の友人だった男性。

そして、祭壇の前で私は院長の腕を取った。


この人なら大丈夫。

私は、自信を持って、永遠の愛を神の御前で誓った。

もちろん、彼も。


薬指にきらめくシンプルなプラチナ。

私は仕事中も身につけられる唯一のアクセサリーと共に深い愛情を彼からもらった。



─── Fin. ───


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