周囲からは愛人を持つようにとしきりに言われているようだが、母一筋の父は相手にもしていないらしい。
 子供の頃はあまりにも子供に関心のない父を恨んだこともあったが、父はああやって常に傍にいることで、母を守っているのだろう。
 父親としてはともかく、夫としては誠実な人なのかもしれない。
 国内がそんな状況なので、他国から魔力の高い貴族の子を嫁として、婿として受け入れている家も多数あった。
 それを思えば、素性は不明だが、それでもこの国の王家に匹敵するほど強い魔力を持つアルヴィンなど、理想の婿候補だろう。
 公爵家の守護騎士でなければ、在学中に縁談が山ほど持ち込まれていたに違いない。
(しかも魔法の天才で、剣技も優れているイケメンだからね……)
 だが魔力が強いというだけでつらい思いをしてきた彼を、これ以上誰かに利用させるわけにはいかない。
 セシリアは決意をあらたにする。
(大丈夫だからね、アルヴィン。わたしが守ってあげるから)
 彼は何といっても、ブランジーニ公爵家の令嬢であるセシリアの守護騎士だ。そのセシリアを差し置いて、アルヴィンに手を出そうとする者はいないだろう。