もう雪が降る季節。
マフラーと手袋をして、首をすくめながら学校に向かう。
息を吐くと白くて寒い。
こういう時に、手を温めてくれる彼氏が欲しいって思っちゃう。
いや、ずっと彼氏が欲しいって思ってる。
私は寂しがり屋で、いつもは3歳下の可愛い弟、怜音(れおん)とうざがれてもずっとひっついているから家では寂しくないんだけど、
学校では親友の彩芽(あやめ)にはずっと付き合ってる彼氏、奏くん(かなでくん)がいて、私がかまって〜っていうと、
「俺の彼女だから」って彩芽を連れて行って、彩芽もごめんね〜って言うけどまんざらでもない顔して嬉しがってるし、
「私の親友だから」って理由で彩芽をひとりじめできないのが悲しすぎる。
だから思うの。
ずっと私の隣にいてくれる人は彼氏しかいないって!!
彼氏がいれば寂しい時も笑う時もずっと時間を好きな人と共有できるんだよ?
こんな幸せな時を過ごしたい!
「音羽、おはよー」
「彩芽、おはよ!」
彩芽の隣には、奏くんがいる。
絶対に他の人から取られない好きな人の隣に入れるポジション。
それが彼女で彼氏。
2人を見ると彼氏欲しいって思う。
だから毎日思うの!!!
「もうすぐクリスマスだね〜」
クリスマス。
この言葉を聞くと悲しくなってしまう……
「彩芽は奏くんと?」
「そりゃな、イルミネーション見に行くんだよな」
「そうだよ、今年は遠いところに観に行くことにしてるの!」
あぁ、羨ましい。
今度こそ彩芽を取ろうとしたのに、もう約束してたなんて……
怜音はクリスマスも部活で夜遅く帰ってくるし、
ママとパパは今出張で遠くにいるし……
今年は本当にクリぼっちになっちゃう……
家で1人でいるなんてイヤだよ……
「はぁ……」
「音羽、どうしたの?また彼氏作りたーいって?」
「その通り」
「音羽ならすぐ作れるのにね〜、でもすぐ別れちゃうか」
そう、私はそれなりに告白されている。
まぁ、平均して週1くらい。
最高は1日で7人から告白された。
高1の体育祭の時。
でもその時には彼氏がいた。
今まで1番大好きで愛した人。
木瀬 泰杜(きせ たいと)くん。
4月の入学式で一目惚れして、アタックしまくって付き合うことになった。
身長は180cmで切れ目で細身だけど筋肉質で頭もよくで運動神経もいい。
学校では泰杜王子なんて呼ばれていた。
みんなからモテモテで私を選んでくれた時はものすごく嬉しかった。
世界で1番私が幸せ者だと思って、ずっとニヤけててクラスのみんなから変な目で見られてたらしいけどそんなの全然どうでもよかった。
同じクラスの1-Aで一緒に登校して弁当を食べて一緒に帰る。
ずっと一緒にいれるのがすごく嬉しかった。
付き合い始めたのが去年の6月。
別れたのが去年の9月。
たったの3ヶ月で別れることになった。
原因は私の束縛。
泰杜くんには毎日会いたいって言ったし、必ず夜は電話、他の女の子と話さないでとは言わないけど極力話さないでとお願いした。
他の女の子と仲良く話してるところを見たら、なんでと問い詰めて喧嘩しちゃうことが多かった。
それが泰杜くんにとっては息苦しかったみたい。
自由がないなら恋したくないと言われて、束縛しないから私と別れないでとお願いしたけど、
「もう好きじゃない」
とあっさり振られてしまった。
私は泣いて泣いて泣きまくって、
他の女の子はやったみたいな顔されてすごく悔しかったけど、泰杜くんはもう一切私の顔を見てくれなくてもう付き合えないんだと思って、諦めようと決めた。
彩芽から忘れるためにも次の恋をしたら?と言われて、去年の11月に1-Cの薫くんから告白されてなんの気持ちもなく付き合ったけど、心ここにあらず状態でたったの1ヶ月で別れた。
だからクリスマスは怜音にめっちゃお願いをして弟とイルミネーションを見に行った。
来年こそは彼氏と見るんだと誓った。
それから約1年。
まだ彼氏ができてない…
いや、正確に言えば、泰杜くんと別れてから、薫くん、晴哉くん、龍斗先輩、3人と付き合ったけど、どれも3ヶ月も続いてない。
「俺に興味ないよね」「なんか重い」「うざい」
っていう理由で振られている。
ずっと私を見て欲しい、毎日好きって言って欲しい、ずっと一緒にいたいって彼女だったらそう思うじゃん。
好きな人に対してそう思うのは普通だと思う。
それが重いなら軽かったら彼女彼氏なの?って思う。
だから私だけを見てくれて私と同じように愛してくれる人が現れるまで待つと決めているんだけど、
「クリスマスまでは彼氏作りたーい!!」
朝から視線が私に集まる。
「なんだこいつ」って目線。
だって本音だもん。
「最悪男友達でもいいんじゃない?」
「それはダメなの!恋人じゃないじゃん!」
私は恋人同士で甘い夜を過ごしたい。
一緒にイルミネーションを見て、クリスマスプレゼントを交換して来年も見に行こうねって誓いのキスをしたい!
「音羽を好きな人たくさんいるじゃん〜」
「でも最近告白されないんだよねー」
「あー、音羽は重いって噂のせい?」
「多分〜」
学校の何人かと付き合って別れる原因が私が重すぎるからっていう理由が学校中に広まって、音羽=重い女っていうレッテルを貼られてしまった。
だからか告白されない。
まぁ今は自覚しているし本当に寂しがり屋だしずっと隣にいれる人が欲しいと思うから変わろうと思わないから気にしてない。
「でも欲しいな彼氏」
「好きな人いないの?」
「うーんいない」
いないってより泰杜くんが完璧すぎたから他の人と付き合うとうーんってなっちゃう。
だから告白もしたいと思わない。
でももう泰杜くんには未練はないよ。
これホント。
「そっかー、でも音羽に彼氏ができるようにサンタさんにお願いしとくね〜」
その頃にはもう遅いよ!!
♡
廊下を歩いていると、空き教室から声が聞こえる。
「泰杜くんと……誰だろう………」
こっそり覗いてみると、泰杜くんが女の子とキスをしてる。
「えっ…」
やばい声が出てしまった…
でも気づいてないみたいで2人はキスを続けている。
誰だろう女の子……顔が見えない。
「もういいか」
「またいつデートできるの?」
「クリスマスには時間空けておくから」
「絶対だよ、約束!」
「分かった、必ず空けとくから」
「好きって言って」
「莉子、好きだよ」
「ありがと、私も好き」
2人はまたキスして教室を出て行った。
隣の空き教室に隠れたからバレずに済んだよね…
てか、問題はそこじゃない!
莉子って、同じクラスの岩崎 莉子……
いやそれしかありえない。顔見ちゃったし。
去年私と莉子と泰杜くんで同じクラスで莉子も泰杜くん狙ってたけど私が付き合ってすごい嫌な目で見てきて別れたらざまぁみろって顔に出してきたし、別れて残念だったね〜って言われてむかついた記憶がある。
だから莉子に対してあんまり印象は良くない。
てか嫌い。
今は泰杜くんは2-Aで私と莉子は2-Cで同じクラスだけどほとんど話さないし、莉子が泰杜くんと付き合ってるなんて聞いたことない。
でもさっきの会話を聞いたら泰杜くんと付き合ってるのは間違いない。
いや、泰杜くんと付き合えて羨ましいと少しは思うけど泰杜くんを取ろうとは思わない。
さっきも読者の皆さんには言いましたが、本当に泰杜くんに未練はないの!
ただあれだけ私に対して嫌味をこぼしてきた莉子に彼氏がいるのが気に入らないだけ。
それがまさかの泰杜くんっていうね。
はぁ……莉子に対抗するためにも私の幸せのためにも彼氏をGETしなければいけない!
どこにいるのかなー、私の王子様………。
「2年C組、流川音羽、直ちに数学教材室に来い」
あ、やばい、用事忘れてた!!
担任から呼ばれてるんだった。
「すいませんー」
「遅いなにしてた」
「えーと、彩芽と話してました」
「すぐに来いと言ったのにな?」
「だからすいませんって言ったじゃん」
「口答えするんじゃない、課題追加な」
「え、課題?」
「前回のテストで数学20点だっただろ、赤点だから特別課題だ」
「えー!!!」
私に彼氏は降りてこないで課題が降りてきてしまった……
私の運どこにいっちゃったの……
「まぁ量が多いから提出は冬休み終わってからだが冬休みの課題も別にあるから早く終わらせておくことだな」
数学なんか変な文字使われてるし公式覚えられないし謎に証明多いし大嫌い。
しかも教えてるセンセーが担任の南野聖(みなみの こうき)センセー。
無駄にイケメンで高身長、泰杜くんとは違うイケメンで低音ボイスでまぁ女子から人気だけど、(私は除く)
うまく説明できないけど、泰杜くんはさわやかイケメンで南野センセーはちょっと大人の雰囲気があるエロスが漂ってるイケメンって感じかな?
私はさわやかイケメン派がかっこよく見えるけどね。
それより南野センセーは授業のテンポ早いし、声低いから私からしたら聞こえにくいし、すごく課題の量が多いから私は好きじゃない。
「プリント20枚って頭おかしい」
「お前の頭がおかしいんだよ」
たまにカチーンとくること言ってくるし、
外見だけ良くて中身は残念って感じ。
「お互いおかしいってことで」
「もう分かった、うるさいから出てけ」
「センセーの方がうるさい」
「ああ言えばこういう、お前の方がうるさいんだよ」
「お前お前言わないで、流川音羽って名前忘れたの?」
「俺の生徒だから覚えてないわけないだろ、流川音羽」