さっきからクツクツと笑うこの人は、わたしをからかってどうしたいんだろう。


「本当はそんな感じなんだな。じゃあ学校で普通に素で話せんのって"アキちゃん"くらい?」

「清瀬くんがアキちゃんって呼ばないで!」

「いいじゃん減るもんじゃねぇし」


この人が学校の人気者なんて信じられなくなってきた。


顔がいいだけ。頭がいいだけ。運動ができるだけ。


"誰にでも分け隔てなく優しい"……?

ううん、ただの意地悪な人だ。


「そりゃ、素で話せる年上の幼馴染がいたら好きになるわな」

「だから、清瀬くんには関係ないってば」

「関係なくねーだろ。だって、告白現場見ちゃったし」

「こく……っ!?もうお願いだから放っておいてよ」


だめだ、疲れた。


「と、とにかく!このことは絶対誰にも言わないで!絶対だからね!」


これ以上一緒にいたら完全に清瀬くんのペースに呑み込まれそうで、わたしは逃げるように教室を出て行った。