「どうしたの?」



そう問いかけながらも、織が笑ってくれたので、内心嬉しかった。

織は目を伏せて、それから柵に背中をつけた。



「…いや、…懐かしいなって」



楽しかった思い出を思い出したのかな



「だねぇ…って言いたいところなんだけどね、保育園の頃はあんまり覚えてないんよね」

「……まぁ、俺もだけど」

「え?懐かしいって言ったやん〜」

「……立夏がめげずに俺に話しかけてきたことしか覚えてねぇ」

「えぇっ?!なにそれ?!じゃぁ織は私に話しかけられるの迷惑だったの?!」

「……ちげぇよ」



織は手の甲で口を隠して、それから優しく目を細めた。

その笑顔に、ドキッと胸が鳴る。



「せんせ〜…あのひとたち、ケンカしてるよ」



いつから見られていたのだろう。

声がした方を振り向けば、小さな女の子が先生と一緒にこちらに視線を向けていた。



「あっ…ごめんなさいっ…」



保育園の先生はクスッと微笑んで、それからペコッと頭を下げた。

それにつられて、私と織も頭を下げる。


不安そうな顔をしている女の子と目が合って、思わず笑ってしまった。



「喧嘩してないよ!なかよしっ」



織の腕をギュッと掴んで笑えば、女の子は安心したように笑顔を咲かせた。


…かわいい


先生にもう一度頭を下げてから、保育園に背を向ける。


織と視線が重なって、堪えきれなくなったかのように、ふたりで笑い合った。