ふと思いついたのが、さっきの追いかけっこだった。

織が珍しく無邪気に遊んでくれたから、嬉しかったなぁ



「………」



髪に触れていた織の手が、ピタリと止まった。



「………ふざけてねぇ」

「……え?」

「……いきなり走ったから、足がつったんだ」

「えっ倒れたふりじゃなかったの?!ごめん!」



じゃぁ織が震えてたのって、笑いを堪えてたんじゃなくて……

あぁぁ〜〜わたしはなんてことを〜

…いっぱいツンツンしちゃったもん



「……腹痛いふりしやがって」



織の声が、いつもより少し低い。


…あれ…、怒っとる…?


慌てて後ろを振り返ると、ふいっと顔を逸らされてしまった。



「……立夏に何かあったら…俺…」



織は目を泳がせて、なぜか動揺しているように見える。

こんな織を見るのは、初めてだった。


…そんなに…、心配してくれたの?


お腹が痛いふり、しただけなのに…

ごめんね。



「…もう、織は心配性すぎるんよ」



織にそんな顔してほしくなくて、にっと笑って見せる。