それから、学校でまるちゃんに話しかけることがなくなりました。

一緒に帰ることもなくなりました。


そんな毎日がしばらく続いたある日、

学校から帰るとポストに手紙が入っていました。

封筒を開いて紙を取り出すと、

「わたしを見つけてください」

と書かれていました。

封筒の裏に名前は書かれていません。

みおは少し怖くなりました。

お母さんに言おうか、と思いましたが、結局、言えませんでした。


寝るとき、みおはベッドのなかで考えました。

見つけてってことは、いま、いなくなってるひとだよね?

思い出そうとしましたが、頭に浮かびませんでした。

きっといたずらだよ、

みおは自分にそう言い聞かせながら眠りました。


次の日、お昼休みになって初めてあることに気がつきました。

まるちゃんの姿が教室にありません。

誰も何も言わないから、ぜんぜん気がつきませんでした。

そのとき、あの手紙を思い出しました。

もしかして、まるちゃんなの?


家に帰るとまた手紙が届いていました。

「わたしを探してください」

次の日もまるちゃんは休んでいました。

みおはまわりの女子に聞いてみました。

「まるこ? あっ、気がつかなかったなー」

「風邪とか病気じゃない?」

「ま、三軍のことなんて関係ないよ」

それだけで話は終わり。

すぐに別のことを話しはじめました。


授業が終わるまで、みおは震えが止まりませんでした。

学校から帰って、恐るおそるポストを開るとやっぱり手紙がありました。

みおは思いました。

これって、わたしが見つけてあげないとダメだっ。

彼女はお母さんに遊びに行ってくる、と言ってまるちゃんの家を訪ねました。

インターホンを押しても誰も出ません。

みおは思いつく場所を探しまわりました。

でも、まるちゃんの姿はどこにもありません。

疲れたので、公園のベンチに座って少し休むことにしました。


最近できた広くて大きな公園。

たくさんの子供たちが遊んでいます。

あっ!

彼女は思い出しました。

この近くにも小さな公園があったことを。

この公園ができるまでは、みんなそこで遊んでいました。

もちろん、みおもまるちゃんと毎日のように遊んでいました。

立ち上がると走って公園に向かいました。


まるちゃんがいたっ!

小さな公園のベンチにまるちゃんは座っていました。

みおはまるちゃんの横に、でも、少し間をあけて座りました。

ふたりともしばらく黙ったままでした。

こうなったのは、わたしのせいなんだ。

みおはやっと話す決心をしました。

「学校、なんで休んでるの? 病気、じゃないよね?」

「わたし、、、いなくても、関係ないし」

まるちゃんは、ぼそっと言いました。

「ひとりだし、忘れられてるし」

また、間があって、

「なんだかこの公園みたい」

力なくそう話したあと、

「でも、三軍だから仕方ないか」

弱々しくまるちゃんは笑いました。

「違うって! あんなの勝手に決まってるだけ」

すると、まるちゃんは少し怒った顔で、

「一軍だから、それ言えるんだよ」

みおは言葉に詰まりました。

いつのまにか、あのグループ分けに参加していた。

そして、一軍のグループになっていた。

それは間違いありませんでした。

いつの間にか、自分が一軍なのが当たり前と思っていたのです。

「ご、ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。わたしメガネのときもずっとかわいいって思ってた」

「えっ?」

「みんな気づくの遅すぎだし」

まるちゃんは小さく笑いながら言いました。

「見つけるのが遅くなってごめん。何通も手紙を書かせちゃったね」

まるちゃんは、みおの言葉を聞いてぽかんとしながら、

「んーと、手紙って?」


みおは手紙について話しましたが、まるちゃんは知らないようでした。

なら、あの手紙は誰が書いたの?

「今日は話せて嬉しかったし。明日からはちゃんと学校に行くよ」

「わたしも、ちゃんと声をかけるね。また一緒に帰ろ!」

まるちゃんのニコニコした笑顔を久しぶりに見ました。

まるちゃんの顔はまん丸だからか、笑うとなんだか自分まで暖かくなるようでした。