引っ張られた方向とは逆の方へ


少し強い力で引っ張られた。



ポスッと軽くぶつかった場所からは


「もう大丈夫だよ」


ふわり、と。

とても懐かしい香りがする。


「誰だお前は……」


いつの間にか、離されている左手。


その空いた手をギュッと再び握るのは


「友達ですけど、何か?」


冷たい目をしながらも

とても温かい手。



「行こう」



その人から距離をとるようにして

優は私を連れてズンズン先へと歩いていく。



(嗚呼、私は────…)


この1ヶ月間ずっと

この手に握られたかった。