それにしても、爽やかな笑顔を貼りつけている昼間の彼は、いつまでたっても同じ車両に乗っている私に気づかない。

彼の友達と向かい合うようにして立っていて、私に背を向けているからっていうのもあるんだけど、出会ってそろそろ二週間だ。

いい加減、気づいてくれてもいい気がする。

まあ、いいか。

その程度の関係だということなのだから。

私は人のひしめく電車の中で、誰にもわからないように自分自身をなだめ、窓の向こうの移りゆく景色へと視線を移した。

くすんだ水色の空には、ポツポツとした霞のような雲が浮かんでいる。

木の葉の色もくすんできて、秋の訪れを予感させた。

九月初旬には見られた夏の名残りは、いつの間にか消えている。