彼女の脇のあたりを、一輝の母さんが肘でつつく。

「雨月、挨拶は?」

――ああ。

そのとき俺は、この不思議な状況を、どういうわけかすんなりと理解した。

腑に落ちなかったすべてが、カチカチと音を鳴らして形を成していく。

Y女子には存在しなかった“雨月”という女の子。

存在していないんじゃない、まだ存在していなかっただけなんだ。

要するに君は、本当に夜の妖精だったということなのだろう。

俺の妄想なんかじゃなくて、間違いなく、闇の中から現れていたんだ。