一輝には、雨月が見えていなかった……?

どういうことだ?

ある日突然、高架に佇む俺の前に現れた、死にたがりの女の子。

彼女は、俺にしか見えない幻だった?

そんなこと、あるわけがない。

手を繋いだときの感触も、まだこの掌に残っているのに。

――『冬夜が好き』

絶望の中に落ちてきた、陽だまりのように温かい彼女の言葉も、はっきりと耳に残っている。

あのときの返事、まだしていないのに。

まるで闇に吸い込まれるように、俺の前からいなくなってしまった――。