「大ちゃーん、はい鉛筆ー」

「ん。」



鉛筆を受け取って、やっとパネルに向き合う。



あの子がここに来るかもなんて、無駄に期待すんのはやめておこう。


だって期待する分、なんもなかったときのへこみっぷりはきっと激しい。


最初から期待なんてしなかったら、きっとへこまなくて済む。


高橋ななちゃんはここには来ない。


うん、期待すんのはやめよう。


とにかく今は絵を描こうって、パネル係に頼まれた下描きを、鉛筆で大きく描いていく。


スラスラ鉛筆を動かして、目の前のパネルにだけ集中。


絵を描くのは好きだから、いつの間にか真剣になって、3年の男子の声も、あの子の友達集団の声も、周りの音が、全部聞こえなくなる。


無心になって、他の全てをシャットアウト。


時間を忘れて、無我夢中で描き続ける。



けど。



気に入らない線が生まれたとき、意識は急に引き戻される。