「かけたし。」

「なにが」

「話し、かけたし。」

「なにそのドヤ顔」

「……。」



今日に限って興味なさそうな顔して、あずさは雄介と帰っていった。



聞けや。


いつもしつこく尋問してくんだから、話しかけたことにもっと興味持てや。



全然、こんなちっさい出来事、あずさにとっては一大事でもなんでもないんだろうけど。


もっと先の進展を、あいつは期待してるから。


だけどそんなの、望み通りいくわけない。


チームメイトになったからって、たった一言話しかけたからって、次の日に友達になってるわけでも、知り合いになってるわけでもないから。


あの子にとってはただの、名前も顔もよく知らない、ただの3年生の1人のまま。


存在すらも不確かな、いるかいないかもわかんない、通行人レベルの人間のまま。