「同じ中学だったじゃん」

「え、…どの、子?」

「俺が1番最初に泣かせた子」

「…、」



直人は中学のときからいつも彼女がいた。


ヒナタちゃんと付き合う前も、何人かの彼女候補の女子たちが、直人の周りにはいつもいた。


中学も生徒が多すぎて、自分の学年の奴らだって把握しきれてなかった俺が、その彼女候補たちを覚えてるわけがないけど……



1番最初に泣かせた子は、きっと、その彼女候補の中の誰か。




「お、チャイム」

「……。」

「じゃあまったねー」



チャイムが鳴って、直人はいつもみたいに笑いながら2年の教室に戻っていった。



直人は、悪いやつじゃない。


1番最初に泣かせた子だって、きっと気持ちに応えてやれなかっただけ。


俺も……いつか愛原さんを泣かせんのかなって、思った。


ハッキリ言ったら、泣いちゃうのかな、って……



いつか俺も、さっきの直人みたいな顔、すんのかなって。