「俺、生徒会室行かなきゃだから先行くわ」

「ん。」

「がんばんなさいよ、生徒会長!」



ペコっと会釈して小走りで駆けていく瞬くんは、多分今、うそをついた。


生徒会室に行くなんて、絶対うそ。


彼女の母ちゃんが苦手なんだ、あの男。



「ねぇ大ちゃん。あんなイケメン好青年、ほんとにうちのあずさと付き合ってるの?」

「んー……うん。」



さっちゃんと一緒に、駐輪場から玄関まで歩く。



「あずさ、弱みでも握ってる感じ?」

「かもしんねぇ。」

「かわいそうに生徒会長。あずさに弱み握られたんじゃ、もう逃げられないじゃない」

「いんじゃない。お似合いだし、あの2人。」

「そう?どう見ても不釣り合いだと思うけど」

「うらやましーもん。好き好き同士。」

「……」



さっちゃんが急に黙り込んで、なんにも喋んないから。


隣を見てみたら、にやっと笑って、俺を見てた。



「……なに、その顔。」

「好き好き同士になりたい相手が出来たのね?」

「……。」

「1年ときも2年ときも思春期感ゼロの男が、とうとうねぇ」



ニヤニヤしながら、でも嬉しそうに、さっちゃんが笑う。


なんか俺、……どんどん色んな人にバレてってねぇ?