「うわ、すげー降ってるじゃん!」



菊の傘にぎゅうぎゅうになって、外に出た。



「うお、冷てぇ!」

「おま、押したら俺が濡れるだろ!」

「……俺、駐輪場まで真ん中にして。」

「ちょ、俺の傘!」



正門までの真っ直ぐな道で、押して押されて、傘の取り合い。


ぎゅーぎゅーに詰めて傘に収まろうと、男4人がもみくちゃになってる。


菊に押されて飛び出た体には、雨が容赦なく当たるけど。




冷たい雨の、その中で……



なんとなく立ち止まったのは、ほんと、なんとなくだけど。



でも、見えた気がした。



雨の中、ぼんやりと見える、さっきの廊下。




遠いけど……見えねぇけど……





「……。」


「、…」





あの子が、……いた……