「大ちゃん、いつもそっからなに見てんの?」

「……んー。」

「眩しくねーのか?」



1年の教室から、生徒たちがわらわら出てくんのが見えるのに。


あの子だけは……見当たらない。


こっちの校舎じゃ、ねぇのかも……



「そーだ、聞いてよ。2年の女子とLINE交換したぜ、俺」



雄介の好きな子は、2年生。


俺はいつも、返事もしないでなんとなく聞いてるだけなのに、雄介はこまめに報告してくる。


それに比べて俺は、自分の話は誰にも、全然しないから。


こんな風に見上げてるのも、空かなんかを見てるって、きっと雄介は思ってる。



「今日、LINEしてみる」

「まじか。」

「でも彼氏いんだよなー」

「がんばれや。」

「お、めずらしーな。応援してくれるの」



少し時間が過ぎたから、見上げるのをやめて視線を下ろす。



「行こーぜ、腹減った」

「うん。」



歩きだして……でもなんとなく気になって、振り向いた、ら。





「……。」






あの子が……立ってた。



眩しそうに……俺が見ていた場所から、空を見上げてる。


まるで……俺がなにを見ていたかを、確かめてるみたい、に……。




「……んなわけ、ねーか。」