澪と結人くんの掛け合いは楽しくて見ていて飽きないけれど、今日はもう頭がいっぱいで楽しむ余裕もない。

「で、奈央、ほんとのところはどうなの?」

結人くんに聞こえないように耳元でそう言って、興味津々といった顔で澪がまた私の顔を覗き込む。

「そんなんじゃ、……ない」

「えぇ〜うそだぁ!じゃあなんでそんなにぼけっとしてんのよ」

「ただお昼食べたばっかりで、少し眠かっただけだよ」

「ほんとに?」

「うん。ほんと」

今はまだ、澪やみんなに全てを話す気にはなれなくて。

自分の気持ちの整理もついていないから。


「なんだぁー恋の病かと思ったんだけどなぁ」

澪がそんなことを呟く。

「竹内はいつも人のこと勝手に決めつけ過ぎなんだよ」

「大野は黙ってて。ていうか、あっち行っててって言ったでしょ!」

「俺の席はここなんですー」

また二人の言い合いが始まった。

二人ともごめんね。今は笑って見ていられる気分じゃないの。