「伊南くんって彼女いるのかな?」

「いないとしてもあの見た目じゃ彼女できるのは時間の問題だねー」

「伊南くんの彼女になる人羨ましいね」

隣の少し派手目の女の子たちの会話が嫌でも耳に入ってくる。


端正な顔立ちに真新しい制服をしっかりに着る遥は、誰の目から見てもかっこいい。

周りを見て呆然とした。ただの転校生だったらこんなに人は集まらない。

「奈央、どうしたの?」

そんな様子の私を見て、今度は少し心配そうな澪がいた。

「……ううん、なんでもない」

力ない声しか出なかったので口角を上げてみた。

「そっか。よし!イケメンも見れたことだし教室戻ろ!もうすぐ休み時間も終わるよ~」

「……だね」

私は冷静でいられなくて、その後澪が話してた言葉なんて全然耳に入っていなかった。


教室に戻ってからは言葉を発する気にもなれず、肩を落として静かに席についた。