鏡の前でくるりと一回転。
「────よしっ!」
完璧っ!!!
どこからどう見てもおかしな所は無し!
「紀恵~?颯ちゃん来てるわよ~」
「ちょっとまって!今行く!!!」
お母さんのその言葉に、私は慌てて自分の部屋を飛び出た。
今日は、あの日颯太さんと約束した日で
ずっと行きたかった遊園地に連れてってくれる日!
「紀恵」
ウキウキ気分の中、
玄関で靴を履いてる最中
お父さんとお母さんが私の元へとやってくると
「いってらっしゃい」
「気をつけてね」
2人は笑顔を浮かべて見送ってくれた。
あの日から、お父さんの過保護もなんだか軽くなった気がする。
こうやって颯太さんと遊びに行くことだって
何も言わずに見送ってくれるのだから。
「いってきます!!!」
もちろん私も、笑顔で返事をする。
前までのくすんでいたはずの景色が
今じゃ色鮮やかで眩しくて
「紀恵さん」
優しく名前を呼んでくれる彼のおかげで
「颯太さんっ!」
毎日に、花が咲く。
「おはよー!!」
「おはようございます」
颯太さんの元へと駆け寄ると、
近くには見慣れた車が。
「よく眠れましたか?」
「ううん!楽しみで眠れなかった!!」
「それはそれは」
いつものようにエスコートされ
助手席へと導かれる。
「遠足前の小学生のようですね」
「しょ…!?違うし!!」
たまにされる子供扱いにムッとしちゃうけど
まあそれも合っているなと思った。
だってこの日がずっと楽しみで…
助手席に座ると、
「……?」
不意に颯太さんの手が伸びてくる。
その綺麗な手が
指が
ゆっくりと私の頬に触れると
「可愛い。」
「っ、!」
ちょっ…
朝から刺激が強い…!!!
まだ朝だというのに
私の胸は煩いほどに高鳴って
もともと眠たさなんて一切なかったけど、
飛び抜けて目がギンギンに覚めるような
颯太さんの一言にはそんな作用がある。
(今日一日心臓が何個あっても足りないかも…)
どうやって落ち着かせるか考えなきゃ…