「あとは二人で勝手にやって。

 さ・よ・な・ら!」


私は、フンと鼻で笑ってやると、リビングドアを思いっきり閉めてやった。

そして、玄関にある趣味の悪いゴールドのパンプスを蹴っ飛ばしてやる。


「ふん! 不細工な女狐!」


リビングでは相変わらず、ケバ狐がギャーギャーとわめき散らしている。

私は、ちらっとリビングドアを横目で見たけれど、征司が追いかけてくる様子はない。


「あぁ~、最低~!!!」


私は合鍵をドアに思いっきり投げつけて、外に飛び出した。


「うわっ! 寒っ!」


北風が吹き抜け、引っ掴んできたコートに右腕を通そうとすると左袖だった。


「あっ! もぉぉう!!!!」


自分に悪態をついて、足早にマンションを出る。


イライラしながらクリスマスで賑わう街をぶらつく。

あちこちからクリスマスのラブソングが流れていて、どこもかしこも、幸せです! みたいなカップルばっかりでうんざりする。


「あぁ! もう! なんなのよぉ!」



クリスマスイブの夜だからタクシーは捉まらず、始発電車が発車するまでカフェで時間を潰し、駅に向かった。

まだ街にはイルミネーションが輝き、朝の気配はなかった――