「私、帰るわ!」

「おい、美穂、待てよ!」

「くっだらないメロドラマに付き合ってらんないわよ!」


私の言葉に反応して、ケバ狐は私を睨みつけてきた。


「ちょっとぉ、あんた、待ちぃ! この泥棒猫!」

「はあ? 泥棒猫はあんたでしょ! でもこの男、くれてやるわよ!」

「ちょっ、美穂!」


あたふたしている征司。

前にも見た光景だ。


「征司! あんたはろくでもない男ね!」

「ろくでもないってなんだよ!」


征司は声を張り上げた。


「今はそんな事で、怒鳴ってる場合じゃないでしょ!」


私が睨みつけると、征司はトーンダウンした。


「こいつは誤解なんだって!」

「なんやの、誤解ってぇぇぇえ!!」


ケバ狐は、ヒステリックな金切り声を上げる。


――あぁ、うるさい!!