「カノジョがいるかはしらないけどね」

「そっかぁ」

「自信あり?」

「ないってば! 大人の男性だから相手にされないよ」

「ふーん」


真央は横目で私を見た。


「本当に、自信ないってば!」

「ま、頑張って! じゃあね!」


真央はヒラヒラと手を振って自分の部署に戻って行った。


「またね~」


私はウキウキ気分で化粧室に寄ると、ケータイが鳴った。

画面には幸太の名前が表示されている。


「もしもし」

『俺、今日暇?』

「暇っちゃぁ暇かな」

『じゃあ、飲みに行こうぜ』

「いいよ、幸太のおごりならね」


私は気分が良かったので、明るく答えた。


『今日はヤダよ。お前がおごれよ』

「何それ? だったらヤダね」

『俺、ふられたんだぜ。そういう時は慰めるだろ、普通は』

「え!! マジで?」

『マジ!』

「そっかぁ。わかった。なんでもおごっちゃう」


私は元気よく答えたが、幸太の悲しげな表情が浮かんで、さっきまでのテンションが一気に落ちた。