なのに、私たちがドンペリで乾杯をしていると、鍵の掛かっていない玄関のドアが開けられ、


「ちょっとぉ! なんやの、これ!」


と、ドカドカと派手な女が乗り込んできた。


「アサミ! お、お前! 何しに来たんだよ!」

「何しにって、決まってるやん! クリスマスやろ!」


私は呆気にとられ、ポカーンとする。


「最終便に飛び乗って来たのにぃ! 誰なん! この女!」


ケバい狐顔の女は、巻き毛を振り乱しながら更に目を吊り上げて、バッグを振り回した。


「あんた、裏切ったんかぁ!!」


ブンブンとヒョウ柄のバッグが征司の目の前をかすめる。


「やめろって! やめろよ!」


―――バコッ!!


「い、痛ってぇ!」


ケバ狐は征司の顔面めがけてバッグを叩きつけた。


「この、どアホ!!」


今度は征司をバシバシと叩きだす女。

征司は赤くなった自分の顔を擦りながら、攻撃をかわそうとしている。

が、情けないことにそれを止められない。

ケバ狐のキラキラ輝くネイルが征司の手や頬に喰い込む。


――うわっ! 痛そう……

ってか、関西にも女がいたのか……

いくら商社マンでも、あちこちで女を買い付けてくるなよ!


私は呆れて、ふぅと溜息を吐いた。