正月休みが明けたある日――
会社の近くにイタリアンの店が開店したよ、と真央に誘われ、昼休みに行ってみた。
その店は、ブルーとモノトーンを基調にした落ち着きのある洗練された雰囲気だった。
上品な料理も大満足で、今度は夜に来ようね、と真央と話していると、背の高いスーツ姿男が近付いてきた。
「いらっしゃいませ」
真央は立ち上がりお辞儀をした。
「こんにちわ。開店おめでとうございます」
「ありがとうございます。店はどうですか?」
「素敵です。料理も美味しい、店の雰囲気もいいですね」
「そう言ってもらえると嬉しいですよ」
知的な雰囲気の男は軽く微笑んだ。
「佐伯さんのお友達ですか?」
「はい、同僚です」
と答える真央。
「初めまして、高城(タカギ)です」
「初めまして、浅居美穂です」
「高城さんは建築家で、この店をプロデュースしたの。うちの会社でもお世話になってるのよ」
と、真央が説明すると高城さんは、
「いやぁ、プロデュースっていうか、アドバイスしただけですよ」
と白い歯を見せて照れ笑いをした。
私はその笑顔にときめいた。
今までのスマートな物腰とは違って、爽やかなスマイル。
このギャップに親近感を感じる。
しかも、低めの声が素敵。
年はいくつだろう?
結婚してるのかな?
なんて思っても、私からは訊かない。
いつも自分からアピールなんてしないから。
それから高城さんも席に座り、仕事や店の話で会話が弾んだ。