席に戻ると、コーヒーとパンが用意してあった。

タオルを持ってきてくれた女性はいなく、武骨な男だけが座っている。


「あの、これを貸してくれた人は……」

「ああ、店に戻りました。隣がパン屋で忙しいんです」

「そうですか」

「さあ、どうぞ座って」


暖房が点けられた部屋は暖かい。

そして、コーヒーとパンのいい香り。


「わぁ、美味しそう!!」


声を張り上げてしまった。

男はニコニコ笑って私を見ている。


うわっ 見っとも無かった……。


私はうつむく。


「笑ってすみません。とても喜んでいるので思わず……」

「いいえ。私こそ」


男は照れた顔を見せて、コーヒーをすすった。


悪い人ではなさそう。

意外と愛嬌のある顔をしている。

森のくまさん、みたいな。

でも、油断は禁物!


私はミルクをたっぷり入れてコーヒーを飲んだ。

一瞬にして、体じゅうがほんわか温まる。

そして焼き立てのパンを食べたら、さらに心地よくなった。