カントリー風の化粧室に入った私は、鏡を見て唖然。
化粧の剥げた酷い自分の顔が写っているではないか。
ぎゃぁぁぁ!と叫びたかった。
マスカラが剥げている。
眉毛も薄くなっている。
隈ができている。
うわぁ、最悪……。
急いで化粧を直そうとして、またもやショック。
化粧ポーチを征司の部屋に忘れてきたのだ。
――ガーン!!!!
バッグには薬用リップとハンドクリームしかない。
ガクッとうなだれる。
と、コンコンとドアをノックして、エプロン姿の若い女性が入ってきた。
「あのぉ、これ使ってください」
と、タオルと化粧水などのミニボトルを差し出した。
しかも歯ブラシまで。
「え? いいんですか?」
「はい、どうぞ」
と微笑むと、女性は出て行った。
有り難いけど、今の誰?
どうして分かったんだろう?
とりあえず、洗顔と歯磨きをする。
いくらかスッキリして鏡をのぞくと、さっきよりはマシになっていた。
化粧品はないけど、すっぴんで困る相手じゃないし、まぁいいか、と開き直る。